誰もが加害者にも被害者にもなりうる交通事故。
頭ではわかっていてもいざ事故を起こしたらパニックになりがちです。
いざという時に慌てず正当な解決ができるようにと10月23日、宮崎翔太弁護士を講師に招き
『弁護士業務を通して見る交通事故の基本』と題して学習会を開催しました。
オンラインを含めて36名が参加し、関心の高さがうかがえました。
警察への事故届は必須 物損・人身はどちらに?
まずは事故が起きたら必ず警察に届けます。軽微な事故だからとか面倒だからとかで警察への届け出を怠ると「交通事故」として扱われなくなり保険会社も弁護士も関与することすらできません(場合によっては罰もあります)。
よく聞かれる項目に事故証明で『物損』にするか?『人身』するか?を重要視する人がいますが、どちらを選んでも実務的には大差はありません。どちらを選んだとしても実際にケガをして治療が始まれば、それはもう人身事故になります。物損にチェックをしたままケガの治療を始めたとしても、保険会社の補償の対象となります。
損害の内容は?
損害の内容として、特にもめることが多いのは休業損害(事故により失われた収入補償)、慰謝料(肉体的・精神的苦痛に対する賠償)、後遺症(認定されるかされないかで大きな違いが出ます)の3つが代表的なものとして挙げられます。
自営業者の休業補償は?
通院等で仕事を休んだ場合の休業補償は所得で決まります。原則、自営業者の場合は確定申告の内容が基本になります。申告所得が低いと補償も少なくなってしまうことも・・。実務の中では、実際に働いている人よりも無職者の方が補償が高いという矛盾も現実にはあるそうです。
慰謝料・後遺症
慰謝料は入通院期間の長さで決まってきます。ここで大きく違いが出てくるのが「裁判基準(通称・赤本)」と「自賠責基準」。入通院期間が長くなれば金額が上がるのは当然ですが、それ以上に弁護士が介入しないと慰謝料は「裁判基準」になりません。弁護士特約をつけていれば弁護士報酬は保険で賄ってもらえます。 治療期間が一定経過した場合、これ以上治療しても良くも悪くもならない状態を「症状固定」といいます。そこで検討されるのが「後遺症」で、裁判で争われることも多いそう。認定に当たって実際に力になるのはレントゲンやCTなどの客観的証拠。こうした画像に写らない「むち打ち・頸椎捻挫」などは本当に痛くても厳しいことも多いとのことです。
納得いかない?過失相殺
過失相殺は、相手と自分の過失の割合を決めるものです。一方通行逆走や一時停止違反者と事故をした場合でも、一定の過失割合があるので注意しましょう。
さらに不合理なのが相手が高級車の場合。仮に相手の過失が9であったとしても自分の支払が多くなる場合もあるとのこと。皆さんも高級車とは極力事故にならないよう避けた方が無難です。
交通事故をどう解決するか?
示談交渉は①本人が行う、②弁護士へ依頼する、③交通事故紛争処理センターに申し立てる(センターでの解決には保険会社に片面的拘束力があり、保険会社はだされた条件を拒否できないという義務があります。広島にもあるのでぜひ覚えておきましょう)方法がありますが、示談でどうしてもの納得いかない場合は訴訟での解決があります。
訴訟で逆に不利になるケースも
訴訟にはそれなりのリスクがあり、示談時の条件を訴訟で否認して裁判で覆るケースも稀にあるとのことなので注意しましょう。
チェックポイント 特約は交通事故以外でも使える
これは権利保護保険なので弁護士特約は交通事故に限らず、誰かに殴られてけがをした場合の解決や同居の親族の場合にも適用されることがあるので必ず確認しておきましょう。
交通事故に遭った時の最大のポイント
最後に宮崎弁護士は「交通事故で儲けることはないと思っておいた方がいい」のが最大のポイントと強調します。少しでも補償してもらいたいというのは万人にあるが、事故にこだわりすぎるあまり、訴訟に持ち込まれてしまったり、いつまでも精神的な負担が続くのは得策ではない。適切な補償を適切なタイミングで解決することが一番と思っていると締めくくられました。
しっかり説明を聞いた後は質問タイム。実際に交通事故にあったという参加者からもたくさん質問が出されました。
「相手が無保険で自己破産された場合はどうなるのか」「今、まさに事故で交渉中。珍しい車に乗っているので部品の調達に時間がかかっている。どうなるか不安」「追突でムチウチになった。全然良くなる気がしない。後遺障害は取れるか?」「相手に現場から逃げられた場合どう対処すればいいか」「弁護士のタイムチャージ制というのはお得なの?」など、疑問や不安、弁護士を使った時の報酬の決め方に至るまで色々聞くことができ、大好評でした。
上記のQRから学習会の様子を視聴することができますのでご覧ください!