労使間トラブルを未然に防ごう!

労働基準法・ハラスメントについて学習
今年度力を入れている広島民商の学習会。第8弾として11月21日、広島労働局の職員を講師に招き、労使間トラブルを避けるためのポイントなどを学習しました。オンラインも含めて42名が参加しました。
第1部は労働基準法の基礎知識として、広島労働局・労働基準部監督課の三時範裕さんに具体的な事例を交えながら分かりやすく解説頂きました。

雇用したら
まずは労働条件(左記の内容)について原則書面で明示することになっています。口約束だと、事業主は時給1000円と伝えたのに労働者が1500円と聞いたなどでのトラブルも実際にあるそうです。
労働者が10名以上いる場合は、就業規則も作成し、労働者代表の意見書を添えて労働基準監督署に届出が必要です。

賃金の支払い
通貨で(労働者の同意があれば銀行振込も可)、直接、全額払いで、毎月1回以上、一定期日(毎月15日など)で支払い日を決めて支払わないといけません。
よく「お皿を割った分の弁償を差し引いて払う」などがありますがこれはダメです。
労働局では一度全額支払ってから徴収するという形をとるように指導しています。

時間外労働
労働時間の基本は、1日8時間、週40時間。これを超える場合は、超える時間によって労使協定、36協定が必要です。時間外労働上限は原則、月45時間、年間360時間となっています。

残業時間や休日出勤については、割り増し賃金が発生します。トラブルのほとんどがこの未払です。労働者も請求するときは争うつもりで来ますので、1年分計算すると数十万になったりする事例もあります。時間外勤務でも働いた分の給与をきちんと渡していれば、トラブルになる事例はほとんどないそうです。

年次有給休暇
6か月以上勤務すると、正社員だけでなく、パートやアルバイトでも有給休暇が取得できます。また、有給休暇が10日以上付与される労働者には、年5日を取得させることが義務となっています。

労働関係法は、労働者を保護するための法律だと思われがちですが、使用者を守るための法律でもあります。各法のポイントを押さえ、今後の経営に役立てていきましょう。

ハラスメントの定義と対策
第二部は、講師を広島労働局上内隆司さんに交代し、ハラスメントについて学習しました。
セクハラは、性的な言動・行動そのものが業務上必要ないものなので、受けた人が不快と感じたら該当。防ぐには職場で不必要な性的言動をしなければ良いという事になります。

パワハラとは、
優越的な関係を背景とした言動
当該言動が業務上必要かつ相当な範囲を超えている
それにより労働者の就業環境が害されるもの

この3つの要件全てに該当するものです。
当然、業務上の注意や叱責が必要な場合もありますので、セクハラのように受けた側が不快というだけでは該当しません。暴力でケガを負った場合は1回でも該当になりますが、1回の恫喝では該当しなかった判例もあります。

パワハラでの調停事例として、
★上司に相談したが、何も対応してくれなかった。過呼吸となり心身の健康維持が困難となり、退職。損害賠償及び慰謝料を合算して約120万円を請求。

★「威圧的な口調でバカ・アホなどと暴言をはいた」「長時間の叱責、物を投げつけるなどのパワハラにより精神疾患を発症した」として謝罪と慰謝料100万円を支払った事例などが紹介されました。

パワハラを防止するには、何がハラスメントに該当するのかを事業所全体で理解し、労働者が他の労働者に対する言動に必要な配慮をしていくことが大切です。相談された場合には、事実確認を行い、適切な対応をする必要があります。また、プライバシーを保護し、不利益な取り扱いをしないこと等が義務付けされています。

最後の質問タイムでは、

終業時間になって帰れと言っても仕事を続ける場合は残業代を払わないといけないのか?

労働を受け取った以上は支払いが必要。労働を受け取らないようにしないといけない。

などなど様々な質問が出て、参加した皆さん「勉強になった」と大好評でした

----------労働条件 原則書面で交付----------

必ず明示しなければならないこと

①契約期間に関する事

②期間の定めがある場合は更新基準に関する事

③就業場所、従事する業務に関する事

④始業・終業時刻、休憩、休日などに関する事

⑤賃金の決定方法、支払時期などに関する事

⑥退職に関する事(解雇事由を含む)

⑦昇給に関する事

その他、安全衛生、食費、休職や退職手当、表彰・制裁など別途定めがある場合はその明示も必要