売掛金が入らない!こんな時どうする!?弁護士に聞く債権回収のポイント

今年度の広島民商学習会第9弾として、広島法律事務所の井上明彦弁護士を講師に招き、
債権回収について学習し、オンライン含めて32人が参加しました。
実際に売掛金回収に成功した事例、失敗した事例を紹介しながら分かりやすく解説して頂きました。
売掛金は実際に取引があった事を示せる証拠が重要です。
契約書や請求書、日報などに加え、メールやLINE等のやり取りも証拠となります。 
ただ、証拠があっても独自に交渉すると感情的になって決裂したり、「こっちが困っているので相手も困らせたい!」と追い詰めすぎて相手が倒産してしまったりして回収ができなくなれば元も子もありません。
債権を回収するためには相手が商売を続けてくれることも重要となりますので、感情的にならずに交渉する事が大切です。
また(しつこく)請求し続けることも不可欠です。相手に無視されても、請求を続けることで支払いの優先順位が上がる可能性もあります。
自分でできない場合には弁護士のような第三者が入り、専門家ならではの知恵と経験で冷静に交渉することでうまくいく事もあります。

成功事例①
土木工事における契約解除と代金回収に関する訴訟。依頼者が工事を進めていた途中で設計変更を行ったことが契約解除の原因となり、その後の代金回収に関する争い。
契約書や設計変更に関するやりとりが残っていた。また、相手業者の対応に矛盾があったことも有利に働いた。訴訟においては相手の一貫性や誠実性を求めることが重要。

成功事例②
依頼者はA社から数年に渡り水道工事を受注していたが、工事のたびに不払いがあり、長期間で数百万円に達し、調停を行った。
(調停は、裁判所が間に入り、調停員が双方の意見を聞き、解決に向けて調整をする手続きです。裁判と異なり、あくまで話し合いの場であり、合意に至らなければ不調で終了します)
相手が一度に支払うのは困難だと答えたため、最終的に長期分割払いで合意。
さらに、支払いを促すために「一定額を遅れずに払えば、残りの金額が免除される」といった取り決めを行いました。この方法により、相手に対して支払いを促進するインセンティブを与え、最終的に約8割の回収に成功しました。遅延なく支払いが行われることを前提に、一部免除を提供することで、相手にとっても負担が軽減され、支払いが続いた事例です。

回収できなかった事例①
相手方が廃業してしまったケース。
相手方が事実上仕事をしていない場合、債権回収がほぼ不可能になります。内容証明を送っても、無視したり、受け取らなかったりする場合が多く、回収の手段が限られてしまいます。特に、意図的に受け取りを拒否する場合は、債権回収の努力が無駄になりがちです。

回収できなかった事例②
回収には時間がかかるため、依頼者がその期間に耐えられず、最終的に債務整理を選択。長期間回収できないと、依頼者が資金繰りに困り、借金が膨らんでしまうこともあります。回収しても依頼者にとって意味がない場合、自己破産や債務整理に移行する方がいい場合もあります。

弁護士に頼むメリット
費用はかかりますが、弁護士の名前を出すことで相手の優先順位が変わり、すんなり払って貰える事も多くあります。また、客観的な目線で相手の支払い能力や反応を見ながら回収しやすい方法を提案して貰えるのも利点です。

参加者からは、「弁護士に頼んだほうが得なのか損なのか?」「費用対効果はどのような感じか?」「お金を返してもらう時に一括返済が難しく、分割払いにする場合、月々の支払いの金額についていくらまでとかの決まりごとはあるのか?」等の質問が挙げられていました。