小さな行政でも生き残れる道を共有

安芸高田市と交渉懇談
地方経済の屋台骨を支える小規模事業者が、かつてない荒波に揉まれている状況で、三次民主商工会は7月22日、安芸高田市役所にて安芸高田市の各課と要望と懇談を行い5名が参加。安芸高田市からは商工観光課長や税務課長が対応されました。今回の要望には全商連が4月から6月末にかけて実施した実態調査アンケートに基づいたものであり、現場の「痛切な悲鳴」を数値と実例で裏付けたものでした。
会議の主要テーマは、「物価高騰対策」「資金繰り支援」「税負担の軽減」などで、補助金の創設だけでは、急激な外部環境の変化に対応しきれなく、事業者が求めているのは、単なる資金供給だけでなく、行政が「経営の現場」を把握し、迅速に動けるか、また直接的な対話が必要とされる理由は、この「認識のズレ」を解消し、地域の経済基盤が崩壊する前に有効な手を打つ緊急性にあることです。

独自補助金では無く事業者目線の切実なニーズ
安芸高田市は、物価高騰対策として「安芸高田市省エネ設備導入支援補助金」を独自に創設しましたが市側は、「一時的な負担軽減ではなく、将来にわたる固定費の削減に直結する投資的な支援策」とその意義を強調しました。しかし、対話を通じて浮き彫りになったのは、行政の「投資型支援」と事業者の「延命型支援」の間にある深い溝であるということです。
市は省エネ設備導入による「攻め」のコスト削減を推奨するが、事業者は今この瞬間の家賃や光熱費といった「固定費の直接補填」を切望していて、市は「市独自の財源には限りがあり、特定の固定費を直接補填する制度の新設は困難」との回答でした。
足元のキャッシュフローが枯渇している事業者にとって、その投資を行う余力が無く、特に深刻なのは高すぎる国民健康保健で、他の社会保障制度へ流出が相次ぎ、国保の税基盤が脆弱になり、市の将来的な税基盤を損なう「地域経済の空洞化」への予兆といえます。地方行政の限られた財源の中で「未来への投資」と「足元の救済」をいかにバランスさせるかというが今後の課題として強調しました。

現場からの悲鳴:運送業・建設業を直撃するコスト増と供給停止の壁
意見交換会で語られた事業者の生の声は、統計データには現れない地方経済の過酷な実情を参加者は露にしました。
運送業者は 運賃体系は10年前から据え置かれたまま、燃料費の上昇に加え、エンジンオイルは二倍以上、タイヤ代も3〜4割増と維持コストが急騰していて「自分の取り分が残らない」というひっ迫した状態にあり、大手からの適正な利益分配が末端まで届かない構造を訴えました。
電気工事業者はエアコン部材や電線の価格が1・5倍から1・7倍に跳ね上がっていて。深刻なのは価格以上に「物が不足」。配管テープやカバーなどの資材が注文しても受け付けてもらえない、あるいは数量限定でしか入らないといった「供給チェーンの麻痺」が、工期の遅延と事業者の持ち出し(自己負担)を招いています。
美容室経営者は材料の中身はあっても「パッケージ(容器)不足」で納品が遅れる混乱に直面していること。また、消費税率変更のたびに数万円単位で発生するレジシステムの改修費が、小規模店にとって看過できない固定費負担となっている。「物が入るようになっても価格が下がらない」という構造は、特に構造の末端にいる事業者の所得減少を直撃しており、地方の購買力を内側から蝕んでいることが話されました。

公共工事と入札制度:スライド条項の適用と下請保護の現状
こうした民間の苦境に対し、例えば公共工事の現場ではどのような市の対応かというと、物価高騰に対する一定のセーフティネットが機能している側面があり、安芸高田市は、公共工事の発注において以下の対策を講じていると説明しました。
1・最新単価の適用: 発注時に最新の労務単価および資材単価を適用し、市場実勢を設計価格に反映。
2・単品スライド条項の運用: 契約後に特定の資材価格が急騰した場合、設計変更によって価格調整を可能にする。
3・下請保護の強化: 施工体制台帳を確認し、下請業者への適正な経費計上がなされていない場合、元請業者に対して改善を求める指導を行う。
公共工事においてこうした「スライド条項」などの仕組みが存在することは、民間取引における模範となり得えます。しかし、現実は「公共と民間の格差」が顕著です。民間取引、特に小規模な下請け案件では、こうした公的なルールが準用されず、事業者が一方的にコストを負担する構造が放置されています。
制度の存在以上に深刻な問題として浮上したのが、それらの情報が「必要な人に届いていない」という課題です。

情報のアクセシビリティ:市民に届かない「支援策」とデジタル化の焦燥
意見交換で相応じて出たのが制度の有無ではなく、その「周知」の在り方でした。
市は「利子補給制度」や「税の減免制度」を整備していると強調するが、事業者は「ホームページの検索で見つけにくい」との意見が出ました。行政は「まずは相談に来てほしい」という受動的なスタンスに留まる一方で、現場では「携帯電話代さえ払えず、連絡手段が無い」ほど困窮した事業者の姿があり、温度差が如実に現れています。
さらに、デジタル化の波が追い打ちをかけ、従来の行政放送システム「お助けフォン」の廃止とタブレット・アプリへの移行に伴い、高齢層を中心に不安が広がっています。特に、8月31日という早期割引の申込期限が迫る中、「操作が分からない」「なぜ変えるのか説明が足りない」という憤りの声も上がります。
どんなに優れた制度も、市民に届かなければ存在しないも同然であり、地方行政の有効性は、制度設計の緻密さだけでなく、「情報をいかにプッシュ型で、かつデモンストレーションを交えて分かりやすく届けるか」という広報戦略に依存しています。情報の格差がそのまま経済的な格差に直結している現状を訴えました。