―第20回税金問題研究集会―

4月23日にZOOMオンラインで全商連主催の税金問題研究集会が開催され、三次民商から植野税対部長、酒屋事務局が参加視聴をしました。全国から同じように252ヶ所からの参加がありました。
コロナ禍によって久しぶりの開催となり、この間の混乱に乗じて税務行政のデジタル化とインボイス制度で国民を監視し、丸裸にすることが進められています。
この多くの問題点について広く共有し学習をしました。

講演「デジタル化で守られるべき納税者の権利」/石村耕治・白鴎大学名誉教授

講演では改正電子帳簿保存法(電帳法)とインボイス制度導入で大きく変わる事業者への負担と危険な要素の説明がありました。

1 改正電帳法施行
電帳法とは1998年に制定された法律で所得税法や法人税法で紙での保存が義務付けられている国税上の帳簿書類などについて、一定の要件を満たした場合は電子データ(電磁的記録)による保存を認め、電子的に授受した取引情報の電子データ保存を義務付けることを定めています。
電帳法の成立当初は、法律の適用を受けるための要件が不透明だったので数次改正が行われ、適用要件が整備されてきましたが、規制が厳しく、利用状況は低迷していました。
そこで税務署長の事前承認制度の廃止など帳簿書類の電子保存やスキャナ保存の要件緩和や奨励に向けた抜本的な改正と電子取引で授受した電子データの保存の義務化を2022年1月1日から実施する予定でしたが2024年1月1日に延期されました。
主な問題点としてタイムスタンプの導入があります。タイムスタンプとは、ある時刻にその電子データが存在していたことと、それ以降改ざんされていないことを証明する電子技術です。電帳法のもと保存義務者である事業者、紙の文書をスキャナ保存する場合には原則としてタイムスタンプ要件が課せられます。電帳法では総務大臣の認定を受けた有料のタイムスタンプを購入しなければならず負担が増えます。

2 電子インボイス
電子インボイスとは、インボイスを文書ではなく、電子データで提供し、ネットワーク/オンライン上に構築されたデジタルプラットホームを介して一括管理する仕組みです。
電子インボイスの真の狙いは、「商取引の国家監視」、「商取引のデジタル監視」とされます。つまり事業者間取引や事業者政府間取引にかかる電子インボイスを仲介するデジタルプラットホーム企業の取引状況が国家、とりわけ税務当局のデータベースと紐づけされ「データ監視資本主義」につながる懸念があります。これにより税務調査も常時オンラインが可能になり、記入済み電子消費税申告制度に変わり、申告納税制度崩壊の呼び水となる可能性があると指摘されました。

3金融機関への反面調査のデジタル化
課税庁が金融機関に対してする反面調査のデジタル化には、電子のプラットホーム仲介役業務が出来るIT企業が必要になったので、NTTデータ㈱が手を挙げ、国税庁における預貯金等の照会業務「ピピットリンク」を開始しました。こうなれば例えば税務署員がコンピューターの端末キ―をたたけば、納税者の知らないところで、しかも照会理由を開示しないで、安易に納税者の金融口座情報の回答を得られることにもなりかねません。
現在この「ピピットリンク」はNTTデータ㈱・国税庁に加え様々な行政機関が参入し金融取引照会を行っています(広島県も参入)。私たち国民・納税者の金融取引情報はスッポンポン状態にあると言えると警告されました。

インボイス制度実施中止の共同を
特別報告としてインボイス制度を考えるフリーランスの会の小泉なつみさんが発言されました。
小泉さんはライターを生業としていますが、たまたまインボイスのことを知り、自分のようなフリーランスにとっては衝撃的な制度で危機感から署名を集めようと多くのメディアや機関に呼びかけましたが、反応してくれたのは全商連だけだったそうです。「無名のライターでしかも会員でない自分を共に運動していく仲間にしていただいたのは民商は助け合いの精神が根付いているからだと実感した。私たち業者は生活と仕事が一体化していて厳しい税金で大変。この制度は何一つ良いところがない。共に中止を頑張りましょう」と署名を訴えられました。

広島県連も活動報告
様々な活動をしている7つの県連・民商が活動報告をしましたが、広島県連の寺田事務局長も発言をしました。広島県連が長年取り組んでいる金融機関本店交渉は、反面調査には納税者に連絡をとの申し入れに多くの金融機関が応じてくれているだけでなく情報交換の場になっていて、民商が身近な団体となっています。視聴した植野税対部長は「インボイス制度だけでも難しいのに電帳法とくると多くの中小業者が付いていけない状況に。ただ必ず大変なことになるのは分かった。会員に伝えていかなければ」と話していました。
※今週の商工新聞にも詳しく掲載されていますので活用しましょう。