今年度の学習会第2弾として、5月21日、近年増加している『税務調査』の学習会を行いました。
講師は石立大助事務局長が務め、オンラインも含めて39名が参加しました。
国税庁の方針は、調査件数をコロナ以前の水準に戻すことが重点となっており、広島民商の会内でも税務調査が増えています。今回の学習会では、最近の税務調査での問題点や、過去の調査で入手した税務署側の記録書など貴重な資料も交えながら解説していきました。
★近年の税務調査の動向
税務署が重点的に調査しているのは「無申告者」「消費税の免税点1000万円近辺」「消費税の還付が50万円以上」などです。
最近は調査する候補をAIが異常係数(科目の増減、類似同業者比率)を察知して選出し、そこから調査官が選ぶという形が主流となっています。「同業他社と比べて利益率が低い」「同一勘定科目の金額が前年と大きく違う」「高額不動産を購入」「重点業種である(年によって変わる)」、また、一定の売上・利益があり、長期接触していない事業所へも調査が入りやすい傾向にあります。
★調査の流れ
調査は2種類。令状のある調査は強制ですが、通常私たちに来る調査は任意調査です。任意調査は都合が悪ければ日時の変更もできます。
調査の流れは左記の通りです。調査に入ると仕事内容、取引先など事細かに聞かれます。
このやりとりを場合によって税務署は「質問応答記録書」で証拠に残そうとするので注意が必要です。
★調査での指摘事例
最近、キャッシュレス決済が増えていますが、カードやQRで払った領収書も保存しておく必要があります。カード明細だけでは要件を満たさず、インボイス等の記載もないので、消費税の経費として認められなかった事例もあります。特に売上等に問題がなかった際でも、従業員の通勤手当・食事・出張手当や、車のナビの履歴など細かい指摘をされた事例もあります。
★強権的な調査が横行
最近は税務署の強権的な言動が目立っています。
原則として任意調査は電話で事前通知の連絡がありますが、飲食店など現金商売は無予告で突然訪問してきた事例が複数あります。無予告調査は本来、仮装隠蔽する恐れがあり、やむを得ない場合に限定されているはずなのですが、現金商売というだけで疑がってかかる税務署の姿勢は問題があります。
また、おとり調査を疑う事案も複数見受けられます。任意調査でこうした犯罪捜査まがいの行動をするのは納税者としては許せません。
さらに、任意提出である「会計ソフト等のデータ提出」があたかも電子帳簿保存法で決まったかのように誤解させる言動もあり、税務署に抗議した事案もありました。 こうした強権的な態度に屈せず対応するためには納税者側の権利学習は欠かせません。
実際今調査になっている参加者からも「帳簿には自信を持っていたけど、実際に調査になってみて納税者の権利についてもっと学習しておけば良かったと思う」と学習の大切さを訴えていました。
「税務調査10の心得」を掲載します。いざという時のため、しっかり頭に入れておきましょう。

税務署員が遵守すべき「税務運営方針」(学習会で配布しましたが、必要な方は民商事務局までお問合せ下さい)の中身を知っておくことも大切です。
強権的な態度や、納得の行かない経費否認などしっかりと意見をして対抗していくようにしましょう。
民商でも随時税務署交渉を行って改善を求めていきます。